中国のシンボルともいえる「万里の長城」は、全長2万kmを超える世界最大の防御施設。歴史的にも文化的にも重要な存在であり、映画の中でもしばしば象徴的に登場します。ここでは、長城が印象的に扱われる代表的な映画4作品を紹介します。
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1. 『ザ・グレート・ウォール』(The Great Wall, 2016)
・監督:張芸謀(チャン・イーモウ)
・出演:マット・デイモン、ペドロ・パスカル、ジン・ティエン、アンディ・ラウ、ウィレム・デフォー ほか
・製作国:中国・アメリカ合作
〈あらすじ〉
火薬を求めて中国にたどり着いた傭兵ウィリアム(マット・デイモン)は、万里の長城を守る秘密の軍隊に出会います。長城は外敵からの防御施設ではなく、人類を脅かす怪物「饕餮(とうてつ)」を防ぐ要塞だったのです。やがて彼は、人類存亡をかけた戦いに巻き込まれていきます。
〈万里の長城との関わり〉
この映画の最大の特徴は、万里の長城そのものが主戦場になっていることです。城壁の上で繰り広げられる大規模な戦闘シーンは迫力満点で、伝説的な建造物を舞台にファンタジーと歴史が融合した、異色のハリウッド×中国大作です。
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2. 『ムーラン』(Mulan, 2020 実写版)
・監督:ニキ・カーロ
・出演:リウ・イーフェイ、ドニー・イェン、コン・リー、ジェット・リー ほか
・製作国:アメリカ(ディズニー)
〈あらすじ〉
中国の伝説「花木蘭」をもとにした物語。父の代わりに従軍した娘・ムーランが、男装して兵士となり、侵攻してくる敵軍と戦います。仲間とともに困難を乗り越える中で、彼女は真の勇気と忠義を示す存在へと成長していきます。
〈万里の長城との関わり〉
1998年のディズニーアニメ版『ムーラン』では冒頭に万里の長城が登場し、異民族の侵入を知らせる象徴的な場面が描かれています。
一方、2020年の実写版では、万里の長城そのものを明確に描いたシーンはありません。
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3. 『英雄』(Hero, 2002)
・監督:張芸謀(チャン・イーモウ)
・出演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー ほか
・製作国:中国
〈あらすじ〉
戦国時代末期、天下統一を目指す秦王のもとに、一人の剣士「無名」(ジェット・リー)が現れます。彼は王を狙う暗殺者たちを討ち取ったと語り、王の前に進み出ます。語られる真実と嘘が交錯し、物語は「統一と平和」というテーマに迫っていきます。
〈万里の長城との関わり〉
本作は「秦による中国統一」を題材としています。万里の長城は、秦の始皇帝によって築かれた国家統一の象徴として歴史的背景に結びつきますが、映画の中で長城が主要な舞台や目立つ映像モチーフとして登場するわけではありません。長城に関する描写は、物語のテーマを補完する間接的な位置づけにとどまります。
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4. 『ドラゴン・ブレイド』(Dragon Blade, 2015)
・監督:ダニエル・リー
・出演:ジャッキー・チェン、ジョン・キューザック、エイドリアン・ブロディ ほか
・製作国:中国
〈あらすじ〉
紀元前のシルクロード。辺境を守る将軍フー(ジャッキー・チェン)は謀反の濡れ衣を着せられ、追放されてしまいます。流浪の中でローマ軍の将軍ルシウス(ジョン・キューザック)と出会い、やがて共闘して強大な敵に挑むことになります。東西文明の邂逅を描いた歴史アクションです。
〈万里の長城との関わり〉
物語の舞台は主に「シルクロードと西域の砦」であり、万里の長城が主要舞台として登場するわけではありません。ただし長城は中国の防衛線の象徴として背景的に意識されており、物語全体が「中国の防衛と異民族との関係」というテーマに重なります。
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まとめ
・『ザ・グレート・ウォール』 → 長城そのものが舞台。怪物との戦いを描くファンタジー大作。
・『ムーラン』 → アニメ版では長城が冒頭で象徴的に登場。実写版では長城は描かれず、砦が舞台。
・『英雄』 → 長城自体は目立たないが、秦王の統一と長城建設の歴史的連想で関わる。
・『ドラゴン・ブレイド』 → 舞台はシルクロード。長城は直接の舞台ではないが、防衛や国境の象徴として背景にある。
万里の長城が真正面から描かれる作品は『ザ・グレート・ウォール』とアニメ版『ムーラン』が代表的です。
その他の作品は、歴史的背景や国防の象徴として間接的に長城とつながっています。
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